ムダ毛とマザコン少年Kの思い出

ムダ毛……そのいまいましい存在を初めて意識したのは忘れもしない、小学校三年生の夏でした。

学校で水泳の時間に、当時は細かった腕と足で体育座りを作り、プールサイドに座っていた時のこと。私の隣に座っていた男子が「お前、毛、濃ゆいな」と言ったのです。続けて、「見苦しいから剃れよ、みっともない」と。

そんなに仲良くもない女子に「お前、毛、濃ゆいな、見苦しい」と発言してしまうデリカシーの無さを今では突っ込みたくなるところでしたが、当時の私にとっては衝撃的な出来事でした。

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しかしその男子が続けた言葉は私に更なる衝撃をもたらしました。

彼は誇らしげに「俺は母さんに剃ってもらってるぞ」と言ったのです。

二次性徴は兆しも見えないお年頃に、まだ産毛の腕足の毛の密度について突っ込まれ、見苦しいとまで批判を浴びたのです。

そうか、うでとあしにはえている毛はお母さんにそってもらうのか。

新しい常識を手に入れた私は、帰宅後さっそく母にプールサイドでの出来事を報告しました。

私「お母さん、腕と足の毛を剃って欲しいの」

母「え、どうして? あんたはまだ小さいから、そんな必要ないよ」

私「でも今日、クラスの男の子に毛が濃くて見苦しいって言われたの。その男の子はお母さんが毛を剃ってくれるんだって」

母「……それはね、男の子の方がおかしいと思うよ」

そして母は、「あんたはアトピーがあって肌も弱いんだし、まだ小さいから剃らなくても大丈夫だよ。もう少しお姉さんになって自分で剃れるようになったら剃刀を買おうね」と言って、その話は終わりました。

当時は母が言った「男の子の方がおかしい」という言葉の意味がわからなかったのですが、今ならその男の子の異様さがわかります。うん、確かにそれは「男の子の方がおかしい」と私も思う。

彼は、母親にムダ毛の処理をしてもらえるほど溺愛され、それを甘んじで受け入れるマザコン少年だったのだ。そんな彼も去年5歳年下の女の子と出来ちゃった結婚をしたとFacebookで知った。

彼の奥さんも、生まれた子供のムダ毛を剃ってあげるのだろうか。

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